D04『誰が収集付けるんだ?!』

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「赤色は大丈夫だね。葦木場がいるから」
「銀色も大丈夫だよ。ユキちゃんがいるし」
「青色・・・も大丈夫か?真波がいるからな」
「黒色は泉田さんと悠人が居るから大丈夫だね!」
 
「・・・・・・・・・」
 
 マズい、話に付いていけねえ。
 日直のせいで遅れて部室に来た正清は、準備をしながら繰り広げられているトークの趣旨が分からないので巻き込まれないようにそっとロッカーを開けて準備を・・・。
「緑色も大丈夫っすよ?銅橋さんいるし」
「・・・だぁぁぁ!!!テメエ巻き込むんじゃねえよ!!」
させてくれない優秀な後輩である悠人に敬意を表し、拳を大きくダンッ!!とロッカーに叩きつけた。
 
「で?何の話してるんっすか」
「え?銅橋分かんなかったの?」
「分からないから聞いてるんですよ葦木場さん。なんで俺が緑色で大丈夫なんですか」
「大丈夫だから大丈夫なんだよ。ねーユキちゃん?」
「そうだな。これで捕まらないだろ」
「・・・・・・・・」
待って下さい黒田さん、あんたはこっちにいて貰わないと困るんですけど。その言葉を飲み込んで正清は塔一郎に救いの視線を向けるが、その表情は朗らかだ。あ、この顔知ってますよ諦めたんっすね?!そうっすね?!と、今この場にいる全ての者の中に味方不在を察知してため息を吐くしかない。
「・・・・せめて、ヒント下さい。頼みます」
巻き込まれたくはないが自分だけ蚊帳の外も腹が立つ。どうせすぐに答えは教えてくれないだろうと正清は両手を挙げた。
「ヒント?まだ分かってないの?バシくん?」
「分かるか!俺が来たときには『何色だから大丈夫』って流れになってたんだよ写生大会の準備か?!高校で写生大会ってサボれるワーイ!なイベントだろ!真面目にやってんなよ!」
「・・・・・後継者は銅橋・・・・っと・・・」
「はい!そこ!黒田さんメモらない!大体あんたこっち側だろ!?なんで俺に全てを押し付けてるんっすか?!今からでも遅くないからこっちに来て下さい!!」
「まあ待てよ銅橋。俺だってたまには・・・・」
それ以上は何も言わず、雪成は正清の目をじっと見つめる。
 
(ツッコミを放棄したい)
(あ、はい)
 
 それだけで全てが伝わる悲しいかなツッコミ属性。
 
 
「ヒントその1。意外と楽しい」
「・・・・・・はあ」
全然分かんないっすと正清は雪成に視線を向ける。
「ヒントその2。俺は・・・・強い!!」
「福富さんがクシャミしてますよ葦木場さん」
もう少し声低いですと正清は拓斗に視線を向ける。
「ヒントその3。俺・・・生きてる!」
「おい真波、楽しくなってきてるだろプリント見せてやらねえからな」
あとで宮原に叱られろと正清は山岳に視線を向ける。
「ヒントその4。新開家の伝統行事です」
「スケールでけえな!?嘘だったら承知しねえぞ悠人?!」
新開さんもやったのかよと正清は悠人に視線を向ける。
「ヒントその5。やるとムキになって終わらない。マニアックな色を探す」
「・・・・・・・・あー・・・泉田さんが唯一の良心です」
さすがは尊敬すべき先輩ですと正清は塔一郎に視線を向ける。
 
 ひととおりのヒントを受けて、全員に視線を向けたところで、
「じゃあ行きますよ?!部活前の10分限定色オニ!部室の中から出ちゃ駄目です!最初は青!!」
悠人の掛け声と共に、その場にいる者全てが山岳・・・・ではなく、自分が着ているレギュラージャージを引っ張る。条件反射で正清も握りしめていた。
「あああ!!しまった!俺ら全員青色ジャージっすね?!」
山岳をガードしようと身構えていた悠人はその事実に頭を抱えて、雪成は笑う。
「残念だったな悠人!俺の作戦勝ちだな!」
言いながら『さあ次の色を言え』と身構えている。この先輩、ノリノリである。
 
「・・・・・じゃあ・・・!!」
 
 部室内限定色オニは想像以上に色の溢れた室内で面白おかしく繰り広げられた。

D04『誰が収集付けるんだ?!』の作者は誰でしょう?

  • おりかさまき (65%, 11 Votes)
  • nend (18%, 3 Votes)
  • まや (12%, 2 Votes)
  • まつ乃 (6%, 1 Votes)
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  • 壬生川タマミ (0%, 0 Votes)
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票数: 17

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