【E04】これも伝統、なにごとも全力

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 さぁやって参りました第○×回箱学チャリ部影踏み大会! 実況はこのオレ、今井と我らが主将福富寿一でお送りします! え? オレはともかくなんで福富が実況かって? あー、それはだね。オレらの代になって初めての影踏み大会でさぁ、福富ってば開始するなり『オレは逃げも隠れもしない!』って宣言してドーン! とグラウンドの真ん中に構えちゃったわけよ。傍からみたら格好のマトなわけ。でもさぁ、体育会系縦社会でいきなり主将に突撃できる馬鹿なんているわけないし、そうじゃなくてもバックがこわーいじゃん? トーゼンみんな避けて通るわけよ。そのままゲームが進行して、最終的に荒北との運動神経頂上決戦を制した黒田がフラッフラになりながらグラウンドに行って””うっかり””福富に影を踏まれて終わったわけ。え? 空気読んだ? そりゃねぇ。とにもかくにもその時点で福富はぶっちぎり勝者殿堂入りってコトで以後実況席に座る事になったってわけですよ。うるせー甘やかしって言うんじゃねぇ。
 えーっと、大幅に話がそれましたが、普段一心不乱にペダルを回している俺達にも休養日があります。デカイ大会の後なんかは結構な人数がそれに該当するんですが、放っとくとこっそり練習しやがるバカもいるわけです。ああ、うん。大体分かったってカオしてくれてありがとー。そんな奴らを楽しく効率的に監視しようという試み、それが影踏み。あ、今バカにした感じ? 高校生にもなってなにやってんだよって思っちゃった系? その言葉を待ってました!
 たかが影踏みと侮るなかれ。我が箱学チャリ部の影踏みは普通のそれとはちょっと違う! なんと自分以外は全部敵! 鬼だけではなく誰に影を踏まれたとしても負けとなります! つまり時間いっぱい走りっぱなし。これはキツイ! キツすぎます! 休養日にならねーじゃねぇかって突っ込みが聞こえてきますがその通りです! 考えた奴出てこい! 絶対いつかの時代のレギュラーだろ平部員の体力考えやがれバカヤロー!
 ……失礼、取り乱しました。えー、誰に影を踏まれても負けですが、協力プレイは可能です。体力を温存するためにある時点まではお互い争わないと協定を結ぶも良し、一人ではどうあっても敵わない敵を倒すために協調するもよし。そう、協調です。ロードと同じ。さすがハコガク、どうあっても自転車から離れるつもりがありません。もう普通に練習すればいいんじゃないかなこれ。
とにかく、知力体力時の運、全てを懸けて優勝を目指すのが箱学チャリ部影踏み大会です。ちなみに前回優勝者は東堂。巧みに部員をけしかけて荒北と黒田の両名を早々に退場させ、見事に前々回の鬱憤……じゃなかった、雪辱を晴らしました。今回は一体どんな作戦で来るんでしょうか。先ほどから荒北がすでに何人か殺ってきましたみたいな目で睨んでいますがどこ吹く風です。お前らコエーよ。後輩が怯えてるから止めてやれ。
 後輩といえば、なにやら端っこでこそこそしている泉田と葦木場が気になります。この二人は過去、平々凡々な成績で終わっていますが、だからこそ侮れません。本日のダークホースなるか!?
 おっとここで本日の賭けの集計が入ってきました。え? もちろん金銭は賭けていません。高校生ですから。勝者にはチャリ部の部員ができる範囲でお願いを聞くことになっています。校舎を戦場として提供してもらうリベートみたいなもんですよ。教師も普通に参加してるのはどうかと思いますけどね! あー、やはり黒田と荒北が強いですねぇ。二人でほぼ半分の票をかっさらっています。続いて東堂、新開、……お、今回は葦木場が順位あげてる。真波は相変わらず一定の人気を獲得してるけど、アイツそもそもどこにいんの?あ、黒田が探しに行ってんのね。じゃあ間に合――きた? さっすが黒田できる後輩! よっしそれじゃ真波が逃げない内に始めるとしますか!
 
 第○×回箱学チャリ部影踏み大会、スタートです!
 
 
 
後篇に続く(※続かない)!

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