『参加者様に12の質問』清水さんの回答

1.お名前と利きペダ投稿作品の番号・作品名をどうぞ。
F06「八月三日、食堂にて」作者の清水です。

2.投稿作品の「自分としてはここがポイント!」という部分を教えてください。
前回が葦木場ひとりの内面にフォーカスした話だったので、今回は複数人の外からの描写をメインにしようと思って書きました。
渡辺先生がサイン会で「負けた箱学生たちは、帰ってからみんな泣きましたよ」というようなことを言っていたそうで、それを聞いて以来、ぼんやりと思い浮かべていた話です。
負けた彼らの周囲の大人たちは、きっとケアをしようと動き、それぞれが自分の持ち場でしっかりと働いていて、それでも彼らの敗北を打ち払うことはできない。負けは負けであること、しかしそれでも、プロの作った食事の美味しさは独立していて揺らがないし、温かな食事を提供することは無駄ではないのだ、と思いながら書きました。
同時に、負けたからといって、彼らの競技人生が終わるわけではなく、また彼らの努力がなかったことにもならない。しかしそれでも負けは負け、厳然たる勝敗が存在することが、競技そのものへの信頼である、と思って、負けたことをひしひしと噛み締める話にしました。

3.投稿作品は書きやすかったですか? 書きにくかったですか? それはなぜ?
とても書きやすかったです。箱学のインハイメンバーをまとめて書くのは、これが初めてだったんですが、集団の中でのそれぞれのふるまいを書き分けるのがとても楽だった。さすがライバル校、キャラ立ちしてるな……と妙に感心してしまいました。
この話は、重苦しいけど、その後の彼らの追い出しレースにつながるような話にしようと決めていました。私があまり頑張らなくても、彼らは残さずごはんを平らげて、大人の思いやりを汲み取れるくらいにはタフだったので、思う存分重苦しい空気を書けました。
あと、大部分は内面描写よりも事実を淡々と重ねていって、最後に「みっともないところを見せたと~」の段落で切り込む感じ、書いてて気持ちのよい緩急でした。

4.推理企画ということで、『当てられない工夫』または逆に『当ててもらう工夫』をしましたか? した人は、どんな工夫か教えてください。
いつも通り書いたつもりでしたが、今回は比較的票が割れて、ほっとしました。普段は内面描写をごりごり書く方なんですが、今回は意識してそれを抜いたので、功を奏したのかもしれない……あと、箱学話をよく書かれる、マシロさんや悠さんと同グループだったので、これなら撹乱されるかもと、ほくそ笑みました。

6.その他、投稿作品について、自由に語ってください!
ドラマ『カルテット』の「泣きながらごはん食べたことのあるひとは生きていけます」というセリフと、渡辺先生の言葉から立ち上がったお話でした。号泣しながら何かをする、というシーンが、読むのも書くのも好きです。抑えきれない感情の発露と、それでもやるべきことを捨てられない賢さとかいじらしさとかたくましさが立ち現れるようで、複合的で面白い状態だよなと思いながら書きました。
インハイ後、総北は巻島の渡英や、小野田のスランプ、鳴子の転身など、いろんなことがあったけど、それは敗北した箱学だって同じで、彼らにも色々あったろうと思います。そういう原作では語られない狭間の話を、何度でも書きたいです。
箱学寮は、インハイから帰ってきたらトンカツでお祝いするのが毎年恒例で(レース前に油物は食べさせないかなと思って、レース後ということにしました)、今年も豚肉を準備しておいたんだけど、まさかの負け、しかも地元開催だから当日帰ってきてしまう、という調理士の方々が頭を抱えそうなシチュエーションを、にやにやしながら考えました。そんなわけで、ほぼ同じ材料で作れるポークステーキへと変更になった、という設定です。
ちなみにポークステーキのレシピは、フードスタイリスト・飯島奈美さんが映画「めがね」で出してたポークステーキを思い出しながら書きました。このソース、おいしいですよ。
http://www.vap.co.jp/megane/blog/2008/03/kitchen_2.html

7.推理には参加しましたか?参加したかたは、当てることはできましたか?
参加しました。しかし前回同様、楽しく読みふけり、推理のことをさっぱり忘れ、最終的にほとんど鉛筆転がすような状態で投票しました。熟考の末に解答したものが外れ、直感の方が正解数が多くて、解せぬ、という顔をしています。

8.推理に参加した人は、推理のポイントにしたところと、その結果(当たったかどうか)を教えてください。
今回注目してたのが、文末につける「fin」「了」等の有無と、改行や句点の使い方でした。絞り込むのには、悪くない手段だったような気がしますが、決め手に欠けるかもしれない……

10.自分の作品以外で、このお話が好き! という作品があればぜひ語ってください。
D01「救難信号」
新開兄弟の両親の仕事が、医者(らしい)という情報、考えれば考えるほど、面白いですよね。それでも新開さんはペダルを踏むことを選んだ、ということがひしひしと尊いです。
D04「甘い優しい」
東堂は絶対に家族や周囲の人々に愛されて育った子供だと思ってるんですが、こういうままならなさの中にいることもあったろうなあと思います。甘い物を食べさせてくれる人がいて、泣ける場所があることを書いてくださってありがとうございます……という気持ち
C01「寒咲家の食卓」
おれがの!(言ってみたかった)
通司さんと幹ちゃんが仲いいの、大好きなんですよね……かわいかった……。たぶん総北の人々は、兄妹どちらが作ったクッキーでも、喜んでくれると思います。
C09「ハウ トゥー リヴ」
同じ地域に育った総北ならではの空気だなあと思いました。失われていくものがあり、しかし思い出を共有できる相手がいること、静かで優しい話だなと思いました。

11.今回「利きペダ」に参加してみて、いかがでしたか?ご感想をどうぞ。
ビターな話もあり、新登場のキャラクターもあり、ますますバラエティに富んできて、読む側としても大変楽しい回でした。お題が色、食、と来て、次回のお題が何になるのか今から楽しみです。(三大欲求つながりで「眠」では……!?とか思ったことを白状します)

12.次回やそれ以降の開催に向けて「こうだったらいいのに!」というご希望などありましたらどうぞ。
基本は現在のシステムのまま、一グループの人数が少数になるといいかなと思います。
今回はグループ単位で感想をつぶやいたのですが、9人分をまとめてツイートするのは結構骨が折れました。同じ本数でも、9作品×5セットよりは、5作品×9セットの方が気楽かなと思います。
あと、最近読んだ話表示、ものすごく便利だったので、次回復活していただけると、とてもとても嬉しいです……