【H03】影の独白

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流石にくたびれたわ。何でかって?お前が一番わかっとるやろ
お前を御堂筋の所に運ぶ為に俺達が引いとったんや。其処で全て出しきった。
…悔いは、ぜんぜん無い言うたら嘘になる。
それでも、それが俺に課せられたもんならそんでもえぇ思うた。
チームの為に使われる チームの為に散る
其れがロードやしな。
…影でずっとえぇと思っとった俺をそうさせたんは御堂筋やけどな。
アレが生涯初めてで最後にしときたいけどな……?あぁ、聞いとらんか。
あの後で御堂筋と話してな、そのオーダー…言うか俺にとっては無茶振りやけども。
それ聞いて思わず胸倉掴んだんや。自分でも驚いた…あんな事をするなんて、ってな。
でも、それで踏ん切りがついたんや。ふふ、感謝はしたないな。
さっきも言うたけどアレを最後にしときたいし、やれ言われても二度とごめんやし。
……兎に角、俺のインターハイはあそこまで、と決めて走っとった。
ん…?ははは…そう言われるとくすぐったいわ。そないな大層なもんでもないし。
あ…ほら、そろそろ時間やろ?うん、じゃあ…後は任せたで。
 
 
……どうもお久しぶりです。
いやいや、俺の力じゃないですよ。俺は何もしてません。
え…誰がそれを……ははっ、参ったな…本当、何もしてないですよ。
アナタに言われましたけど、俺はアイツの良心にはなれませんでしたよ。
出来たのは…影に徹してオーダーを遂行させる事。そんだけです。
本当にそんだけ……止めて下さい。感謝だなんて、そんな……
大学、ですか?進学はしますけど、ロードを続けるかは…もう、あれだけでも充分、ですし。
…でも、もしかしたら続ける、かも知れません。
本当、未定ですけどね。
えぇ、そん時は言いますよ。はい、お疲れ様でした。
 
 
 
 
――悔いがあるとすれば一つ。
――この目で、このチームの誰かが表彰台に上がった姿を見れなかった事。
――自分が其処に、なんておこがましい。
――俺は、影。そんでええ。それで充分、や。
 
 
 
 
 
下野に葉を付けしは山桜 されども其の姿見られる事は無く 今日を限りに影に散り行く 

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